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責任制限

法改正が功を奏し、株主代表訴訟が提起される機会は大幅に増えたといわれる。依然として総会屋による「たかり」や政治団体(市民団体)による会社経営とは直接関係のない主張の手段としてもちいられる例もあったが、会社経営健全化に寄与する訴訟も増えた。そうした中、大和銀行のアメリカ合衆国における法令違反によって生じた損害に基づき、取締役の善管注意義務違反を理由として最高7億7500万USドル(5億3000万ドルに利息を足した総額)という巨額の支払を命じる判決が出された(大坂地方裁判所平成12年9月20日判決 判例時報1721号3頁)。これを余りに過大な賠償請求であると感じた経済界は、代表訴訟制度へ再び激しく反発するようになった。

これを受けてコーポレートガバナンス(企業統治)、コンプライアンス(法令遵守経営)という言葉がもてはやされるようになると同時に、取締役の責任を軽減する商法改正が進められた。そして平成13年12月の商法改正によって従来から認められていた総株主の同意による責任免除よりも容易に、事前または事後に責任を軽減ないし免除する、数種の方法が創設された。そのうちの一つに責任限定契約がある。

商法から会社法へ
商法においいては、株主代表訴訟の規定は取締役について定める形で、その他の役員はそれを準用する形をとっていた。平成17年(2005年)に成立した会社法においては それを一本化するとともに、色々と規定が整理された。(「株式会社における責任追及等の訴え」の節の規定(第847条−第853条)) 実質的な内容は、あまり変わらないものの、対象となる役員の拡大(上記参照)、会社の被告取締役への補助参加について(第849条2項)、株主の原告適格について(第851条)などは、商法には規定されていなかった、実質改正の部分である。



濫訴防止

株主代表訴訟が日本の商法に取り入れられたのは昭和25年改正商法による。同改正によって株主総会が万能の機関でなくなり取締役会の権限が強化されたが、それに対応して株主総会の監督権限を強化する必要があった。そこで事後的責任追及を可能とすることにより、取締役会による自己監査と監査役による監査を担保するための制度として株主代表訴訟制度が同じ昭和25年の商法改正で導入された(詳しい趣旨は前述の通りである)。

当初からこの制度には経済界、すなわち会社の経営陣からの反発が強かった。些細な事項についていちいち訴訟を起こされては会社経営が停滞化するというのが彼らの主張である。一方で、会社経営に株主が参加する機会を減らそうという思惑から反発しているのではないかという主張もあった。ともかくも経済界の要望が受け入れられ、昭和26年の商法改正によって被告となった経営陣が原告株主の悪意を疎明すれば、裁判所は原告に対して担保の提供を命じることができるとした。担保提供命令があったにもかかわらず原告が担保を提供しない間、被告は訴訟に応じる必要はなく、期間内に担保が提供されないならば訴えが却下される可能性もある(民事訴訟法81条を参照)。

ここでいう「悪意」の意味については争いがあるが、請求に理由がないこと、または株主代表訴訟制度を逸脱した不当な目的の訴えによって被告(取締役等)を害することを知りつつ訴訟を提起した場合のことをいうとした決定がある(東京高等裁判所平成7年2月20日決定 判例タイムズ895号252頁)。

このように株主代表訴訟に対しては否定的な見解が強かった。現実にも、会社経営の健全化を目指して株主代表訴訟が提起されることは稀で、専ら政治活動(市民運動)、または総会屋による経営攪乱もしくは売名行為の手段として利用され、一般にもそう認識されることが多かった。

「商法」時における制度活用のための改正
相次ぐ企業不祥事(特に建設業界)を受けて、平成5年改正商法において株主代表訴訟を提起しやすい訴訟にするための改正が行われた。すなわち、株主代表訴訟が財産権上の訴訟でないと明記されたことにより(当時の商法267条4項、その後、同条5項)、訴訟を提起する場合の手数料が一律8,200円となった。民事訴訟費用等に関する法律4条2項によって、財産権上の訴訟でない請求にかかる訴えは訴額が95万円であるとみなされたためである(平成15年の同法改正によって訴額は160万円とみなされるようになり、よって手数料は13,000円となった)。弁護士費用以外の訴訟に必要な費用が会社に対して請求できることとなったのもこの時からである
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